自転車徘徊紀行 第4話 日本一の田舎を探せ!

(以下、昭和の末期に書いた文章なので、もう環境は大きく変化しているかもしれないです)

ごくたまに首都圏に出張すると、あまりの人の多さに閉口してしまう。
それにどうしてあんなに急ぎ足で歩くのだろう。
あらゆる方向から押され流され、私はほとんど乗り物酔いの状態である。
それでも立ち止まることは許されず、結局、他の人たちと同じような速度で移動している。
そんなとき、心の中でつぶやいている。
「田舎がよかー。こぎゃんとこで、生きていくとはやおいかんぞ」。
なぜか普段あまり使わない方言に戻っている。
訳せば「田舎がいい。こんな所で生きていくのは並大抵のことではないぞ」 という意味だ。この場合、”田舎”とは自分のふるさとのことである。

どうして田舎がいいと思ったのか。
それは田舎に行けば行くほど流れる時間が緩やかになる為だろう。
誰かは忘れたが、有名な人がそう言っている。
なるほど、真理をついている。
そして、この田舎のゆったりした時間を味あうのに最も適したものが自転車だと思う。

ところで、生っ粋の首都圏育ちの人は、どんなラッシュに遭遇してもなんともないのだろうか、それとも、私のように、田舎がいいなあなどと思うのだろうか。
田舎が良いと思うのだとしたら、その田舎とはどこをイメージするのだろうか。
一度聞いて見たい気がする。

前置きが長くなったが、日本一の田舎はどこだろうか。
ここでいう田舎とは決して悪い意味の田舎ではない。
田舎とは先に述べた様に時間の流れが緩やかな所であり、それが最も緩やかな所が日本一の田舎といってよいと思う。
それは、北海道のウペペサンケ山や屋久島のモッチョム岳という人がいるかもしれないが、違う。
秘境と呼ぶにはふさわしいのだが、人が生活し集落を形成していないので田舎とは呼ぶまい。私が旅した土地に限られるが、日本一の田舎の候補を挙げれば、長野県南部の上村下栗か熊本県泉村五家荘だ(あくまで私の独断です)。
下栗は自転車雑誌に紹介されてから静かなブームになったことがある。
まるで、チベットの村のような美しい山上集落である。桃源郷という言葉がぴったりだ。
五家荘は九州山地の懐に抱かれた九州最後の秘境といわれる(島部は除く)。
ここは、観光バスもほとんど来ないし、旅行雑誌でもあまり登場しないし、ましてや自転車雑誌で紹介されているのは見たことがない。そこで、少しひいきをして五家荘を日本一の田舎と認定し、次回、五家荘にスポットライトを当ててみたい。

※昭和から平成のはじめころ、勤務時間に上司の目を盗み、fjニュースグループに投稿した記事を一部追加修正したものです。