自転車徘徊紀行 第6話 お縄を頂戴した話

近年、近所ばかりを走るような状態なので、県外の情報にとても疎くなってしまった。昨日まで、乗鞍スカイランって、自動車専用道路と思っていたが、長野県のホームページ等を見ると、「マイカー規制(バス・タクシー、自転車以外の一般車両の通行禁止)」と書かれており、少し驚いた。
また、長野県側から登る道路は乗鞍エコーラインと呼ばれているようで(30年くらい前、私が走った時は名前は無かったような)、部分的にはマイカー規制となっているが、自転車は大丈夫らしい。
そのため、乗鞍は自転車の聖地と呼ばれているとのこと、自転車の地位が向上?したのかとうれしい反面、なんとも時代に取り残されたサイクリストになってしまったのかと、悲しい気持ちになっている。
毎回、何の役にも立たないだろう紀行文だが、まだまだ、観光道路を自動車に占拠されていた時代に書いたものを紹介します。

(確か昭和の頃の話ですので、道路情報は最新のものを確認ください。)

観光有料道路の中には、高速道路でもないのに自転車通行止というのがある。
いったいどうゆうことなのか。
自動車優先社会によるものだろうか。
山陰の三瓶山を一周する道路があって、かつてはアイリスラインとよぶ観光有料道路だった。
その料金ゲートまでやっとの思いでたどり着き唖然としてしまった。
自転車、歩行者は通行禁止ではないか。
料金所の人に理由を尋ねると、車がスピードを出すので危ないからだとそっけない(何の為の制限速度だ)。
私は泣く泣く引き返したのである。
しばらくして、そこが無料の道路になり、自転車の通行制限も無くなったとの情報が入った。
確かに普通の観光道路になり三瓶山のすそ野に広がる美しい森林や草原を満喫したのであった。
しかし良く考えると変な話で無料になったとたん、自転車通行禁止の理由である危険性がなくなるわけがないではないか。
実際は全く危険性は感じなかった。

昔から車社会への反感があって、2回ほど自動車専用道路の強行突破を試みたことがある。
最初は群馬県の万座ハイウェーで実施し成功した。
紅葉のすばらしい万座温泉で一泊して嬬恋方面へ下りたかったのだが、この自動車専用道路を通ればひたすら下るだけである。
下りの入口にはゲートが無いし下ってしまえばこっちのもの、さすがに出口で登って引き返せとは言うまい。
そう考えた。
そして出口では「自動車専用とは知りませんでした」と答え、少し注意されただけで何もなかった。

これに味をしめた私は恐れ多くも乗鞍スカイラインの下りに挑んだのである。
標高2740メートルの畳平までは乗鞍高原側から登った。
初夏の頃で夏スキーをしている人たちも多い。
その中の一人から何度かスカイラインを自転車で下った話を聞いた。
これは下らねば損だという思いが込み上げてきて、止める2人の連れを振り切ってエイヤと飛び出した。
入口には自動車専用を示す看板や路面に大きく書いた文字が少し躊躇させる。
下りはじめるとすばらしい雄大な山岳風景が広がっている。
普通なら自転車をとめて写真を取りまくるところだが、いつ道路パトロールがくるか判らない。
落着かない気分であまり楽しくない。
少し後悔しかけたときだった。
黄色い道路パトロールの車が登ってくるではないか。
すぐさま激しくクラクションを鳴らされ停止命令が出る。
ああ・・・、小心者の私は非情になりきれず、そのまま停止し素直にお縄になったのであった。
下りはじめてわずか1、2キロの地点と思われる。
「自動車専用と道路に大きく書いてあったでしょう?」
「そうですかね?全然気づきませんでした」などとしらばっくれた。
そして、そのまま車の荷台に自転車は積まれ、悲しいかな車中の人となったのである。
畳平から輪行した連れの二人に高山で落ち合ったが爆笑されたことは言うまでもない。

パトロールの人は温厚な方で特に怒られる事もなく世間話に花を咲かせ、一旦山頂まで戻った後、一番下の登り口ゲートまで連れて行かれた。
「気を付けて行きなさいよ」と放免されたのだが、こんないい人にうそをついてと自己嫌悪に陥ったのだった。
しかし、うそはしっかり見抜かれていただろう、路面にデカデカと書かれた自動車専用の文字が目に入らぬわけがない。

規則は規則である。
私のとった行為は社会人として恥ずべき事だ。
しかし、自転車が税金を払っていない理由かどうかは知らないが、皆が楽しめるはずの自然の中を通るような道路から自転車や歩行者を締め出す、あるいは自転車や歩行者の通行を全く考慮しない設計の道路を建設するなどというやりかたは納得いかない。
機会があれば御上の考えを聞きたいものだ。
ちなみに私は車の免許を持ってません。

※昭和から平成のはじめころ、勤務時間に上司の目を盗み、fjニュースグループに投稿した記事を一部加筆修正したものです。