自転車徘徊紀行(第30話)八代平野の干拓地を走る(2)

八代市鏡町の西に位置するのが、野崎新地という1866年に出来た干拓地だ。
ここも防潮堤に沿った道が干拓地を取り囲むように通じているので、時計回りに走った。

今回も天草諸島の向こうに沈む夕日を狙って、夕刻に走ることとした。
「秋の日はつるべ落とし」とはよく言ったものだ。
油断しているとすぐに暗くなってしまう。

鏡町の街中を鏡川に沿って下っていくと、街はずれには多くの小さな漁船が泊められていたりして、海の気配を感じることが出来る。

鏡川水門の脇を通り、県道338号線をわたり、鏡町の漁協の脇をさらに防潮堤に沿って進む。
しばらく行くと、川につき出すように設置された謎の設備があって、たくさんのサギたちが休んでた。

 

北西に向かって伸びる防潮堤。

 

防潮堤脇の道路は、干拓地よりも高い位置を通っているのだが、干拓地が海面よりも低いことがわかる。
干拓地は埋め立てとは違い、海を堰き止めて干上がった土地であり、そのことを理解できる景色だ。

北西方向に進ん突き当りまで行くと、道は、ほぼ90°折れて。北東方向に向かう。
やがて、道路下、右手に鏡町西部公園が見えてくる。
このあたりにある水門の設備を守るためだろうか、積み重ねられたたくさんのテトラポットが、対岸の宇土半島に向けて伸びている。
もう少し季節が進むと、この付近にもたくさんの鴨たちが集まるようになりにぎやかになる。

さて、太陽がだいぶ傾いてきた。
このあたりも、お世辞にもきれいな海ではないが、遠くをみる限りは美しい風景だ。
一組の親子が公園で遊んでたくらいで、実に静かである。

防潮堤には、ところどころ扉があるのだが、このあたりの扉には下の写真の注意書きがある。
「あとぜき」という、便利な熊本弁だ。
「開けた扉はちゃんと閉めてください」という意味と理解すればいいだろう。
このことばは、何かの調査で、好きな熊本弁の第1位だったらしい。


そうこうウダウダしていると、もう少しで日が沈みそうになってきた。

そこからしばらく進むと、こんどは南東方向に道が折れ、氷川を遡る道となる。
対岸には前回走った不知火干拓の防潮堤が夕日に照らされながら、宇土半島に向かって延々と伸びているのが見えた。