ボーンコンダクション

日本のロケット開発の父と言われる糸川英夫先生(故人)は、日本の探査機はやぶさが訪れた小惑星イトカワの名の由来となった方として有名ですが、ボーンコンダクション理論を提唱したことでもよく知られています。
他人の受け売りになりますが、ボーンコンダクション理論は「楽器を演奏する人には耳で聴く音の他に、楽器を持つ手や身体を通して直接振動が伝わり、その振動波が骨を通して聴覚系に伝搬、音として認識される。聴く者に真に恍惚感をもたらすのは振動波である。」といった内容で、現代のオーディオシステムでは骨を通して聴く振動波が欠けていると指摘されました。
糸川先生はチェロの演奏やバイオリンの制作などもされたようで、自らの体験を持って理論を構築されたのでしょう。

ボーンコンダクション理論はボディソニック等の開発に生かされていきましたが、それよりもはるか前、ベートーベンも骨を通じて音を聴いていたという話があります。

ベートーベンは難聴になってしまってからも、ピアノを使って作曲を続けていたというので、よく出来るもんだなあと思ったものですが、実は棒を口でしっかり噛みしめて、棒の先端をピアノに押し当て、頭蓋骨に伝わる振動を音として聴いていたそうです。
ベートーベンが実践していた聴取方法は、骨伝導ヘッドホンや骨伝導ヘッドセットとして現代に応用されています。

打ち上げ花火を近くで鑑賞していると、ドーンとはじけたときの音を空気の振動として体全体で感じます。
花火を録音したBD等のコンテンツもありますが、相当大きなスピーカーシステムで聴いても、何か物足りない感じがします。
それは、現場で体感する骨を通して聴く音が足りないためでしょう。

低い周波数帯域の音を椅子に組み込んだ振動スピーカーをとおして体に伝えることで、かなりの臨場感が得られますが、結構大掛かりなものになってしまいます。
私は小口径のスピーカーであっても、低い領域の音を振動として効率よく体に伝えることが出来れば、大掛かりなシアターシステムに負けない臨場感のある音を聴くことが出来ると考えます。
そこで、振動を効率よく伝える方法として、身体にしっかりと装着できるウェアラブルスピーカーを検討していきたいと思います。
そして、花火を現場で鑑賞しているような臨場感が再現出来たらと思うのです。