自転車徘徊紀行 第11話 秋のポタリングの思い出

20年以上前、広島県の東広島市に住んでいた頃、公私ともども、不調な日々が続き、ツーリングらしいことも出来ず、週末のわずかな時間を見つけては、近くの山(龍王山)をポタリングすることでお茶を濁している時期がありました。
しかしながら、この短い時間のポタリング、それはそれで、長距離ツーリングと違った充実感があってよかった。

10月に入って、急に秋らしくなった毎度のポタリングコースも、アスファルトの路上にどんぐりの実や落ち葉がいっぱいで、カサカサ、パチパチとタイヤで踏みつけながら登るのは、自転車ならではの面白さだ。
木々や草も週末毎に落ち着いた色に変化していくのが良くわかる。
この時期の楽しみはアケビ探し。
小粒だがたくさんのアケビがなっている年もあれば、なぜかほとんど見かけない年もある。
でかい奴がいっぱいの大豊作の年もある。

大汗をかきながらも何とか山頂に着けば、早速、クワガタのいる木を覗いてみる。
さすがにミヤマクワガタやノコギリクワガタはいないが、コクワガタやスジクワガタは10月になってもまだ健在だ。
しかし、アケビと同じく、蜜の出る木やクワガタの数や種類も毎年移ろいゆくのです。

やれやれとベンチに座り、フロントバッグから缶ビール(「秋味」のことが多かった)を取り出してぐびぐび飲めば、見上げる空の高さに驚いたりする。(こんなことは絶対やってはいけない。さすがに今はやってませんぞ)
休憩とくれば、自転車馬鹿のご多分にもれず、自分の愛車をさまざまな角度からまじまじと眺め始める。
「このスポルティーフ、気に入ってんだけど、泥除けのステーの角度が悪いのが玉に傷だよなー。レバーのパッド
のゴムは干からびちゃって、もう替えないとなー」(そう思うんだったら、さっさとヤレ!)などなど、取りとめも無く下らない事を考えている。

西条盆地(東広島市)を一望する山頂からは、酒蔵の煙突が何本も見える。
そう、西条地区は全国有数の酒どころなのです。

そうだ10月初めは酒祭りだ。
この日ばかりはこんなにたくさんの人がいたのかと思うくらい混雑する。
朝っぱらから、道行く人はみんな赤い顔をしている。
その頃は、私も祭りの期間公開される酒蔵内部を見たり、試飲をしまくったりで、なかなかこの祭りも気に入っていた。
住み始めた頃はウーンと思ったけれども、数年住んだころから、この町も結構、捨てたもんじゃないと思い始めた。
しかし、さすがに、自転車で酒蔵めぐりをやったら危険かしらん・・・。(絶対、やっちゃダメだろ!)
そんな事を考えつつ、街路樹が秋色に染まる町に向かって滑るようにかっ飛ばしていくのでした。

PS.
2022年の酒祭りは10/8、9です。コロナ禍で規模縮小を余儀なくされていましたが、3年ぶりに「酒ひろば」という全国の酒が飲める会場(事前予約制)が開かれるようですよ。久しぶりに酒蔵巡りしたいなぁ、もちろん徒歩でね。

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