自転車徘徊紀行 第8話 自転車昆虫記

下の文書を書いてから、20年以上過ぎたけど、いまでも樹液の匂いがすると、立ち止まり、何かいないか木の幹を探しています。

自分の幼少の頃を思い返すに、夏になると、もっぱら虫取りか魚取りに明け暮れる毎日でした。
特にカブトムシとクワガタムシは必死で集めたものです。
泥除けの先端に、カンガルーの形だったかツバメの形だったか忘れたけれど、風きりのついた実用車で、低山の雑木林を徘徊し、昆虫並に嗅覚と視覚を研ぎ澄ましながら、あちこちのクヌギの木を見て回るのでした。
収穫のあった帰り道はロッドブレーキを高らかに鳴らしながら、坂道をすっ飛ばすのでありました。
時にはスズメバチに邪魔されて、カブトムシを取りそこね落胆しながら帰ることも。
憎きスズメバチめ!

今でも夏になると、ポタリング中にどんぐりの木を見て回ります。
今年も梅雨に入る前からコクワガタの姿はちらほら見られるようになりました。
つい昨日は、近所の山道で、立派な大あごのヒラタクワガタの胸から上の死骸が路上にあるのを見つけました。
最近増えた烏がついばんだに違いない。むごい。

昨年のサイスポの広告でとあるショップの店主がクワガタを探して走っていますと書いており、同類の人がいて安心しました。
確かに童心に帰って、昆虫採集をするのは楽しいものです。
その道具としての自転車はなかなか適している。皆さんもいかがでしょうか?

でも大抵の虫はサイクリングの中では余り出会いたくない。
クマバチは空中の同じ場所でブンブン唸りながら留まり、時には襲ってくるそぶりを見せます。
観察していると縄張りがある様で侵入者は許さない心構えのようです。
山道では次から次にクマバチに出会うことになり、登りでは頭を下げてなるべく刺激しないように通りぬけるしかないようです。
下り坂では、スピードを出して通りぬけたほうが良いのか、徐行すべきか悩むことになります。
クマバチに限らず、夏場の下り坂では、頻繁に虫と衝突し、運が悪いと胸元から服の中に飛び込んでくることがあります。
幸いに被害に遭ったことはありませんが、スズメバチなんかが飛び込んできたらどうしたら良いのでしょう。

ブヨという小さいアブのような虫がいますが、一度、雨の山岳地帯の登りでたかられて困った。
カッパを着て、露出している部分が少ないせいか、呼気中の二酸化炭素に集まるのか、顔の周りにうるさく付きまとわれ、登りなので振り切れる程速くも走れず、恐ろしくストレスが溜まりました。

ほっと一服、木陰で缶ジュースを飲んでいると、口の中でグニュとする感触、吐き出してみると小さな青虫だった。
ウゲ-! でも、毛虫でなかっただけ良かったかもしれない。

何かを一所懸命にやる人を、「××の虫」と言うことがある。
例えば、勉強の虫、練習の虫、自転車の虫、虫の虫?、プログラムの虫(そりゃ”バグ”のことだ)などなど。
最近、この「××の虫」という表現をあまり聞かなくなりましたが、そんな生き方がはやらなくなったという事でしょうか?

※昭和から平成のはじめころ、勤務時間に上司の目を盗み、fjニュースグループに投稿した記事を一部追加修正したものです。