ウェアラブルスピーカーの試作を振り返る(8)

ホルスター型

前後にエンクロージャーやスピーカーを分散して配置することをやってきたが、期待したほどの成果が得られず、前側に音響的な部材を集約して配置することにした。
こう考えたのが、2022年の4月頃だ。
これは、あたかも西部劇のガンマンが身に着ける二丁拳銃のハーネス(ホルスター)に似ていることから、ホルスター型と呼ぶことにした。

ハーネスの部分を”X”型や”H”型にしたり、スピーカーの位置を変えたり、細かい部分を色んなパターンで作った。

しかしながら、低音や振動生成の仕組みやエンクロージャー(柔軟BOX)の構造は同じで、確立したと考えている。
低音と振動、揺れを生成する仕組みの概要は下のとおりだ。

 

「揺れ」と「振動」という言葉に明確な違いは無いと思うが、上記の図では、「振動」は体に対して概ね垂直方向に働き、「揺れ」は体に対して平行な方向に働く。また、その周波数帯域も異なっている。
結果的にそうなったという側面もあるが、「揺れ」に関しては、極力低い周波数になるように、部品と重りの選定を行った。

とにかく「臨場感」にこだわってきたが、「揺れ」がそれを大きく高めることが、実感として分かった。
現在、振動スピーカーやアクチュエーターを身体に付けるウェアラブルなスピーカーシステムは既に存在しているが、残念ながら体感したことがないので、当方のシステムと比較して、「臨場感」の観点でいずれが優れているのか分からない。
代わりに、振動スピーカー単品を入手し、身体に当てたりしてみた感じでは、身体に対して垂直な方向の振動のせいか、スポット的な振動として感じられ、「臨場感」の感じ方は今一歩だった。

まとめ

上で図示した構造は、色々と複雑な構造をトライしながら、たどり着いたシンプルな構造であり、私の中ではひとつの完成形と考えている。
この構造は当面変えず、装着感やデザイン性、使い勝手が進化したものを検討したい。
並行して、統計的なデータ、例えば、数十人に「揺れ」の有無による高揚感の違いのようなデータや、振動スピーカーを使ったシステムとの比較データを取れればと考えている。

おわり