ウェアラブルスピーカーの試作~柔軟BOXの活用

2021年の半ばとなり、少し気合を入れて、スピーカーの外装をレザーで作るにしても多少凝ったデザインの試作機を作りたいと考えた。
前回の試作で柔軟性を持ったソフターホースをBOXとして使用したが、思わぬ振動効果に気が付いた。
そこで、次のポイントを念頭に試作に着手した。

  1. ソフターホースを使うことによる装着性の改善とソフターホースの振動効果の活用
  2. 低音用スピーカーユニット1個で1個の蛇腹の駆動とし配置を再考する
  3. リュックタイプ

部品配置

部品配置
部品配置

2についてだが、低音用スピーカーユニット1個で1個の蛇腹を駆動することにしたので、スピーカーユニットも蛇腹も背中に配置することにした。
経験的に蛇腹の効果を感じやすいのは、背中上部、首の下付近なので、出来るだけ上部に蛇腹を水平方向に振動するように配置することにした。
柔軟BOXに使用するホースは体を前後から挟むように配置し、前後からの振動効果を期待する。

外装デザイン

背中のソフターホースが体にフィットし、また、スピーカーユニットや蛇腹の部分が体にあたって違和感が出ないように配置を考えると、背面の2列のソフターホース間に空間ができる。
そこは、穴が開いていても構わないし、蒸れ防止にもなるだろうということで、四角いドーナッツ型にすることにした。

試作機

内部の配置だが、蓋やファスナーが一切ないので、縫い込んでしまうと、中を見たり、修理したい場合は糸を解くしかない。

内部写真
内部写真

 

 

外観
外観

全体的に角ばった感じになった。

 

背後から見た写真
背後から見た写真

四角いドーナッツの空間を、上部配置の蛇腹を振動させるためのチューブが縦断している。
このあたりを縫うのは大変難儀した。

 

前方から見た写真
前方から見た写真

胸部の空気室3の存在感が大きい。
デザイン的には重厚な感じになり、背中に穴の開いた変化もあって個人的には気に入ったものとなった。

測定結果

専用の測定器があればありがたいのだが、さすがに所有していないので、スマホのアプリで測定する。
iPhoneにインストールした「KRK Audio Tools」というアプリを使って、bluetooth接続するFosiの2.1chアンプBT30D経由で試作機を鳴らして測定したものが下。
椅子の背もたれに試作機をかけて、身体装着時のLRスピーカーに対する耳の位置に相当するところにiPhoneを固定して測定した。

音圧周波数特性
音圧周波数特性(黄色の線)

我ながら非常に良い特性だと思う。
これだけ、広い範囲でフラットな特性はなかなか立派、低域も40Hz 付近までは十分出ている。
低域が良く出ているのはBOXを前後に配置し、トータルのBOXの容積を十分大きくとれたため。

しかしだ、音楽や映画で低域が多く含まれるコンテンツは、ボコンという異音がする場合がある。
自分で決めている音質評価曲(ジェニファー・ウォーンズ「I Can’t Hide」)で試聴確認。
異音を目立たなくするためには、アンプで低域を少し絞る必要がある。

振動効果だが、蛇腹の振動は体をゆすぶるような効果がよく出ている。
柔軟BOX(ソフターホース)の振動は背中で感じることが出来るが期待よりも小さい。
胸付近に配置された柔軟BOXは、ほとんど振動を感じない。
振動が背中に集中し、やや不自然な感じがする。

全体重量は、1160g。
これはずっしりとくる重さだ。
しかし、リュックサックの構造なので、身体に装着すれば苦にならない。
ただ、人によっては重すぎると言うレベルだし、重い材料を使う見返りとして期待した振動効果を得られなかった。

まとめ

  • 周波数特性は広範囲で十分フラットであり、かなり良好
  • 大入力時、低域で異音発生
  • 装着の感触は概ね良好だが、重さをなんとか改善したい
  • 蛇腹や柔軟BOXの振動の位置の見直しが必要

ということで、ソフターホースを軽量な材料に変更し、低域のパワーをもっと加えることが出来るよう、スピーカーユニットの2個使い化にトライすることとした。BOX(ホース)を軽量化することで、スピーカーユニット増設分の重量アップをカバーしようと考えたのです。