自転車徘徊紀行(第37話)亀を助ける

昼過ぎて外に出ると、地獄のような暑さの日が続いている。
それでも、運動不足にはなりたくないので、16時過ぎてから自転車で散策に出かける毎日だ。
昨日は干拓の防潮堤から海を眺めようと、大きな調整池の縁に沿った農道を進んでいた。
そこでカメが乾いた路上にいるのを発見。
左は大きな調整池、左は幅2m程の用水路である。
どちらからどちらに向かおうとしているのか分からなかったが、車に轢かれてしまったらかわいそう。
私は甲羅の長さが15センチほどのカメを手に取った。
おとなしく首や手足、しっぽを引っ込めてしまったが、クサガメのようだ。
最近、ミシシッピアカミミガメばかり見るような気がしていたが、クサガメもしぶとく生きているのだね。
私はきっと調整池の方へ行きたいのだなと勝手に判断し、水の中に逃がしてやることにした。
草が沢山はえているので、池のほとりまで行けるところは限られており、私はしばらく片手運転でカメを運んだ。
ところが、かわいそうなことに途中、落っことしてしまった。
結構、派手にカラカラと転がってしまったが、きっと、甲羅があるから大丈夫だろう。
水の中に入れてやると、ショックから立ち直れないのか、ひっくり返ったまま動こうとしない。
きっと、大丈夫だと自分に言い聞かせてその場を立ち去る。

思い返せば、2カ月くらい前にも、ポタリング中に、ほぼ同じ場所で私はカメを救ってあげた。
池のほとりでカラスにしつこくつつかれているカメを発見、カラスを追っ払って、池に逃がしてあげたのだ。
種類は気にしなかったが、大きさは今回と同じくらいだったなあ、もしかして同じカメか?

更に思い返せば、去年もポタリング中に2回カメを助けたぞ。
1回目は、なぜか防潮堤に沿った道路の上だった。
高さ1m以上の防潮堤があるとはいえ、海まで数mだ。
かたや道路から下ったところに淡水の用水路があるけれども、50mくらいは離れていた。
カメの種類は珍しいことにイシガメだった。
何を血迷ったか、海へ泳ぎだそうと思ったのだろうか?
広い世界を見たかったのかもしれない。
海へ放せば、もしかして竜宮城へ連れて行ってくれたかもしれないが、淡水に戻すという常識的な判断をして、用水路まで運んで逃がしてあげた。
2回目はミシシッピアカミミガメが橋の上を歩いていたので、川に放り込んであげた。

更に思い返すと、奈良に住んでいた頃にも、路上を歩いていたカメを川に放り込んであげたなあ。
更に更に思い返すと、広島に住んでいた頃にも、会社から自転車で帰宅中、真っ暗な夜道の真ん中にうずくまっている30センチ近い大きなカメを見つけて、近くの池に放してあげた。
放してあげるときに気が付いてギョッとしたのだが、かなり血まみれになっていた。
きっと、車にはねられたか轢かれたのだろうな。
その後、元気に回復しただろうか?

そんなわけで何回もカメを助けたと勝手に思っているのだが、どいつも恩返しに来たためしがない。

我が家にも20年近く飼っているミシシッピアカミミガメがいる。
息子が祭りの屋台のカメすくい?で持ち帰ってきた。
しかたなく飼い始めたが、世話をするのはもっぱら親たちである。
関東から熊本へ引っ越す際は、近くの川に放しちゃおうか、手荷物で持ち帰ろうか、かなり悩んだが、ゆうパックで送ることにした。
ネットで調べると、ゆうパックでちゃんと送ることが出来んだよね。
郵便局持ち込んだ時、窓口の人はビックリしていたけれど。
真冬だからおとなしくしていたようだが、真夏だったら輸送中に暴れまくっただろうな。

我が家のカメ、名前は無い。

最近、私の顔を見つけると近寄ってくるくせに、手を出すと口を開けてシューと声を出して威嚇して可愛げがない。